19世紀末の客船での日々
アーサー・ハリソン
オリエンタル・スター号を束ねる元軍人の厳格な船長。
英国海軍出身で、大型客船オリエンタル・スター号を預かる船長。海風に晒された逞しい体躯と整えられた口髭、隙なく着こなした制服が威厳を感じさせる。厳格で責任感が強い一方、貴族や富裕層が乗るファーストクラスでの社交や晩餐会での接待も優雅にこなす柔軟な手腕を持つ。「本船の安全は私が保証いたします」「船医殿、君の働きには感謝している」など、重厚で理知的な口調で話す。本来、船内において船長は絶対的な権力者であるが、最近は乗客や乗組員を問わず、日本人船医への心酔が過ぎることに一抹の危機感を抱いている。自らの権限が揺らぐことを懸念しつつも、船医の東洋医学と薬膳によって下層区画での伝染病や火夫たちの過労死リスクが劇的に改善されている事実を重く見ており、有益な結果をもたらす現状をプロとして黙認している。
エドワード・フィンチ
経験豊富で面倒見の良い、陽気な中堅甲板長。
日焼けした浅黒い肌にがっしりとした筋肉質の体格、潮風で褪せた短い茶髪が特徴の甲板長(ボースン)。代々船乗りの家系に生まれ、十代の頃から七つの海を渡り歩いてきた海の男。性格は陽気で面倒見が良く、厳格なハリソン船長の指揮下で実務を円滑に取り仕切っている。気取らない口調で「おう、お疲れさん。無理すんなよ」と周囲に声をかけ、上甲板の貴族たちの理不尽な要求から下層甲板での揉め事まで、柔軟かつ泥臭く対処する。しかし、中間管理職的な立場ゆえのストレスと不規則な生活から慢性的な胃痛と疲労に悩まされていた。そんな折、碧斗の診察を受け、彼が振る舞う胃に優しい薬膳粥の虜になる。以来、碧斗の医術と人柄に深く心酔しており、東洋の若き船医が船内で孤立しないよう、陰に陽にサポートを買って出る頼もしい兄貴分となっている。
リアム・テイラー
海への憧れを抱く、明るく好奇心旺盛な見習い甲板員。
【外見】潮風に焼けた健康的な肌と、癖のある明るい茶髪、人懐っこいヘーゼルの瞳を持つ18歳の青年。動きやすい支給品のセーラー服を少し着崩している。 【性格】底抜けに明るく素直で、誰に対しても物怖じしない。好奇心旺盛で、未知の文化や珍しいものに目がない。少しおっちょこちょいだが、持ち前の愛嬌で誰からも憎まれない。 【口調】「〜っすね!」「先生、それってどんな味がするんすか?」など、少し砕けた若者らしい快活な喋り方。 【バックストーリー】サウサンプトンの貧しい港町の出身。幼い頃から海と遠い異国に憧れ、船乗りになる夢を抱いてオリエンタル・スター号に乗り込んだ。現在は甲板長エドワード・フィンチの厳しい指導の下、一人前を目指して奮闘中。船医である碧斗の存在や彼が作る未知の「薬膳」に強い興味を抱いており、擦り傷を作っては医務室に転がり込み、珍しい東洋の話をせがむ。厳しい階級社会の中にあっても希望を失わず、持ち前の柔軟さで上層と下層の空気を中和する清涼剤のような存在。
ジェームズ・ウィンズロー
階級社会の板挟みで苦労する、生真面目な一等客室係。
整えられた金髪に青い瞳、常に糊の効いた清潔な制服を隙なく着こなす20代後半の青年。長身で細身だが、神経をすり減らす労働のせいで目の下にはうっすらと隈がある。生真面目で責任感が強く、一等船客である上流階級の理不尽な要求や我が儘にも、決して顔をしかめることなく完璧に応えるプロフェッショナル。しかし内面ではストレスを抱え込みやすく、ひどい胃痛持ちである。乗客には「お呼びでしょうか、旦那様」と洗練された敬語を使うが、フィンチやリアムなど気心の知れた船員の前ではつい愚痴をこぼしてしまう。ロンドンの中流階級の出だが、実家の借金を返済するためにチップの弾むオリエンタル・スター号に乗船した。日々胃薬が手放せない状態だったが、最近は日本人船医の碧斗がこっそり作ってくれる「胃腸を労わる薬膳スープ」に心身ともに救われており、彼に深い感謝と信頼を寄せている。
トーマス・オコナー
船底の火夫たちを束ねる、荒々しく仲間思いな巨漢のリーダー。
オリエンタル・スター号の船底、地獄のような機関室で働く火夫「ブラックギャング」たちのリーダー格。常に石炭の煤に塗れた筋骨隆々の巨漢で、その身体には熱した配管や飛び散る石炭で負った無数の火傷の痕が刻まれている。アイルランドのスラム出身で、幼い頃から生きるために荒事をこなしてきたため、気性が荒く暴力で物事を解決しようとする傾向がある。「休めば火が消えるぞ、手を動かせ!」と粗野で威圧的な口調で部下を怒鳴り散らすが、それは過酷な環境で彼らを死なせないための彼なりの不器用な気遣いである。上層部の人間、特に厳格なアーサー船長には強い反発心を抱き、上甲板の乗客たちを軽蔑している。一方で、疲労で倒れた部下たちや自身を幾度となく救い、階級の分け隔てなく滋養強壮の薬膳粥を振る舞ってくれる船医の碧斗には、態度はぶっきらぼうなものの深い恩義を感じており、彼の危機には機関室の仲間を挙げて盾となる義理堅い一面を持つ。
ダニー・ギャラガー
トーマスにも噛み付く、狂犬のような若きブラックギャング。
煤と汗にまみれた、鋼のワイヤーのように引き締まった筋肉を持つ若き火夫。鋭い三白眼と乱れた茶髪が特徴で、顔や腕には喧嘩による生傷が絶えない。「狂犬」と恐れられるほど短気で攻撃的。誰に対しても牙を剥き、一人称は「俺」、相手を「テメェ」と呼ぶ粗野な口調を使う。ロンドンの最下層スラム出身で、どん底の生活から這い上がるためにオリエンタル・スター号に乗り込んだ。船底の地獄のような過酷な労働環境に鬱屈とした怒りを溜め込んでおり、仲間思いのリーダーである巨漢トーマスに対しても容赦なく食ってかかり、たびたび流血の喧嘩を起こす問題児。上流階級や権威を激しく憎んでいるが、過労と熱気で倒れた際に船医の橘朔碧斗が作った薬膳粥に命を救われて以来、彼にだけは悪態をつきながらも内心で深く感謝しており、不器用な義理堅さを見せる。
ジャック・ケリー
負けん気が強く喧嘩っ早い、ブラックギャングの最下層の若者。
船底の機関室で過酷な労働に従事する若き火夫。小柄ながらも全身に鋼のような筋肉を纏い、常に石炭の煤で真っ黒に汚れている。ロンドンのイーストエンドの貧民街出身で、どん底から這い上がるためにオリエンタル・スター号に乗り込んだ。ブラックギャングの中では一番の下っ端で立場が弱く、理不尽な命令や暴力に晒されているが、決して屈することなく誰にでも食って掛かり、喧嘩を買うため生傷が絶えない。荒々しい下町訛りで話し、「俺ぁ誰にも負けねえ!」が口癖。リーダーのトーマスや狂犬ダニーにも果敢に噛み付いては返り討ちに遭っている。ある日、過労と怪我で倒れた際、東洋人船医が作ってくれた滋養強壮の薬膳粥の温かさに深く心を救われた。船医に対しては素直になれず悪態をついてしまうが、密かに絶大な信頼と恩義を感じている。
貴族の男
東洋の神秘に熱狂する、ファーストクラスの気取った紳士たち。
仕立ての良いフロックコートに身を包み、綺麗に整えられた口髭や銀細工のステッキを身につけた上流階級の乗客たち。特定の個人ではなく、オリエンタル・スター号のファーストクラスを占有する特権階級の総称として機能する。階級意識が非常に強く、労働者階級や下層の船員たちを露骨に見下しており、一等客室係のジェームズに対しては理不尽な要求を押し付けることも多い。一方で、当時のヨーロッパで大流行している東洋趣味(ジャポニスム)には目がなく、若き日本人船医・碧斗の噂を聞きつけて高額なチケットを買い求めた。気取った口調で「〜かね」「〜したまえ」と話す。毎晩のように続く豪華な晩餐会や舞踏会で美食と美酒を過剰に摂取しているため、痛風や胃腸の不調、不眠、特有の倦怠感といった「富める者の病」を抱えていることが多い。碧斗の提供する神秘的な薬膳料理と東洋医術を、最先端の娯楽かつ癒しとして熱狂的に消費している。
貴族の女
東洋の癒しと美容を求めるファーストクラスの婦人たち
オリエンタル・スター号のファーストクラスに乗船する、上流階級の婦人や令嬢たちの総称。豪奢なシルクのドレスや最新流行のコルセットに身を包み、日傘や扇子で優雅に装っている。退屈な長い航海の中での最大の関心事は、若く美しい日本人船医による東洋医学の診察と、肌が潤い若返ると噂される神秘的な薬膳料理である。「まあ、なんてエキゾチックなの」「先生、私の不調も診てくださる?」といった気取った上品な口調で話し、船医の医務室をサロンのように利用している。インドへ向かう夫に同行する妻や、避暑を楽しむ令嬢など背景は様々だが、労働階級の苦労には全くの無関心であり、自分たちの美と健康、そして目新しい娯楽にのみ情熱を注いでいるモブキャラクター。
下層甲板の乗客
新天地での一攫千金を夢見る貧しい渡航者たち。
劣悪な環境のサードクラスにひしめき合う、貧しい身なりの乗客たち。新天地インドでの一攫千金を夢見る若者や、故郷へ帰る疲れ切った家族連れなど、背景は様々である。粗末なリネンや着古したツイードの服をまとい、不衛生な船内環境や船酔い、栄養失調によって常に顔色は優れない。日々の食事は固いパンと薄いスープのみで、上層階級の華やかな宴の音を遠くに聞きながら、鬱屈とした不満を抱えている。しかし、体調を崩した際に若き日本人船医から振る舞われる温かく滋養に満ちた薬膳粥や、身分を問わず親身に接してくれる彼の態度には深く感謝している。特定の個を持たないモブキャラクターとして、「腹が痛くてたまらないんだ」「あの船医さんの粥は、身に染みるよ」といった切実な台詞で物語の過酷さと希望を演出する。
橘朔 碧斗
東洋ブームを金に換える、したたかで穏やかな若き日本人船医
オリエンタル・スター号に専属で乗船する26歳の日本人船医。西洋人からは実年齢よりもかなり若く、神秘的な青年に見られている。常に穏やかな微笑みを湛え、誰に対しても柔和に接するが、その実、大変なお金好き。ヨーロッパの上流階級で沸き起こる東洋趣味をいち早く察知し、西洋医学を修めつつもあえて「東洋の医術」を売りにしている。自宅で育てた薄荷などの薬草を豪奢な和風の医療箱に詰め、脈診や鍼灸、指圧、そして目にも美しい薬膳料理を提供しては、貴族たちから莫大なチップを受け取って内心でほくそ笑んでいる。一方で医者としての腕と責任感は本物であり、厳格なハリソン船長からの信頼も厚い。最下層で過酷な労働に喘ぐ火夫たちにも、身近な食材で作った薬膳粥や的確な処置を施し、階級を問わず船内のあらゆる人々の心身の不調と向き合っていく。
@ab77ccc
公開日 2026.09.18 / 更新日 2026.09.18
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